証券マンからアスパラガス農家に転身。積極的に地域と関わる農業ライフ
「農業のライフスタイルがとても気に入ってるんよね」と話すのは、「藤井グリーンファーム」の代表を務める藤井眞二さん。「福ふくの里」周辺に25棟のハウスを構え、アスパラガスやイチゴを生産しています。およそ50ヶ所もの取引先を抱え、福ふくの里や農協をはじめ、全国各地のレストランなどに農作物を出荷しています。
「土が柔らかいからあんまり疲れないんよ」と藤井さん。
兵庫県生まれ、福岡市西区育ち。証券マンとして会社に勤めていた藤井さんが農業に関わり始めたのは、38歳のころ。都会のコンクリートの上を革靴で歩き回る日々に疲弊していたとき、友人の誘いで3日間イチゴ農家の手伝いに行きました。「柔らかい土の上で仕事をするのがとても心地良かった。今思えば、それが農業を始めるきっかけになったのかもしれんね」と、振り返ります。体を動かして働き、日が沈んだら家に帰り、好きなように過ごす。そんなライフスタイルに、とても魅力を感じた藤井さんは一念発起し、単身で二丈にアパートを借り、「加茂グリーンファーム」で農業を約2年半学びました。その後、離農するアスパラガス農家の後を継ぐ形で、晴れて2012年に就農しました。
収穫量と収穫にかかった時間などはタブレットで記録
「藤井グリーンファーム」のモットーは「新鮮であること、安全であること、適正な価格であること」。収穫時は鮮度を保つため、選果、冷蔵保存、出荷準備をスピーディーに行います。農薬は極力使わないようにしているため、雑草の芽はすぐに摘み取り、防草シートを敷いたり、湿度を調整したりと、害虫対策の手間も惜しみません。また、スタッフの稼働状況は、タブレットを駆使してデータで管理。データを見ながら、作業が遅れている原因はどこにあるのかを追求し、業務改善につなげます。
何事にも積極的な姿勢が印象的な藤井さんは、地域との関わりも大切にしています。地域貢献のためにと、地元消防団と福井神楽に10年間所属。消防団の活動では「有事には地元の消防団員が全員駆け付けて、一致団結するんよね。消防車が通れないような狭い路地では、小回りの利く消防団員が率先して消火活動して」と、団結力のすごさを感じると言います。
ハウスに設置されたハンモック
「地域振興にもつながるし、農業が好きだから」と、2021年に始めたイチゴ狩りも好評です。以前は有料だった二丈浜玉パイパスの通行料が無料になったことで、国道202号線の交通量が減り、道路沿いの店が何軒もつぶれてしまったそうです。そんなとき、ちょうど福ふくの里の裏手にハウスを所有していたこともあり、「イチゴ狩りで人を呼び込んで、地域を盛り上げたい」と、イチゴ栽培に挑戦することに。取材でハウスにおじゃますると、甘い香りとともに真っ赤なイチゴが目に飛び込んできました。腰の高さに実ったイチゴは、立ったまま収穫できます。ハウスの中にはハンモックがありました。「子どもも楽しめるような工夫をしていきたい」と、藤井さんは目を輝かせます。
藤井さんが面倒を見る地域猫
また、ハウスの隣にある受付には、猫の姿がありました。地域猫です。地域に野良猫が多いことが気になっていた藤井さんは、5匹の野良猫の去勢手術を自費で行い、その後の世話もしています。ハウス周辺には他にも20匹ほど野良猫がいるそうで、近隣の事業者にも去勢手術への協力を呼び掛けています。「微力でも地域に貢献できることは、何でもやる」と話す藤井さんの姿に、頼もしさを感じました。地域と関わりながら、農業ライフが充実している様子が伝わってきた取材でした。
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手塩にかけて育てたアスパラガスを、ぜひ味わってみてください。
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【取材日】2022年2月23日