「美容室天」原田敏浩さん・松尾咲子さん

1人より2人で 看板のない癒やしの美容室

 

海沿いの国道202号から二丈福井の集落に入り、車で上ること数分。

2月の菜の花畑を横目に見ながら到着したのは、少し小高い場所にある「美容室天」。

看板がなく、正面にまきが積まれた白い壁の建物は通りかかる人にカフェかと勘違いされることもあるそうです。

週に3日だけオープンするこの美容室で出迎えてくれたのは、2人の美容師さんです。

 

 

19年前、福岡市中央区大名の美容室で同僚として働いていた原田敏浩さんと松尾咲子さんは、「お客さんも自分も、息抜きできる場所で美容室を開きたい」との思いで福井に美容室をオープンしました。

 

市外に住む2人は、オープン日の土・日・月曜日は福井の店舗に通っています。

他の曜日は大名で勤務し、2つの店舗を同時進行なんだそう。

 

福井に縁があったわけではない2人が、元はみかん畑だったこの場所にお店を開くことを決めたのは、都市部の大名とは全く違う、のどかで、海が見える場所だったから。

「海を見下ろしながら仕事ができたら楽しいかなという感覚だった」と原田さんが話す通り、開放的な窓からは、遠く広がる海と糸島半島が見えます。

 

 

白が基調の広々とした店内では、まきストーブが赤々と燃え、寒い冬は来る人を足元から暖めてくれます。

 

 

原田さんの期待通り、お客さんがリフレッシュできる場所となった「美容室天」は、開業当初から大名店のお客さんの半分以上がわざわざ足を運ぶほど。「精神的に癒やしを求めているのかな」と話します。

一方で、看板も出さず宣伝もしなかったため、地元の皆さんには知られていなかったようで、「『あの建物は何だ?』と不思議がられていたんじゃないかな」と原田さん。

 

開業して1年ほど経ち、地元の人がふらりとやって来たのをきっかけに、口コミが広がって福吉の人が次々に来るようになりました。

 

今では、お店のすぐ横の道を通る地元の人たちはほとんど顔見知りです。

取材した日も、通りがかった人を「あの人はオシャレな人でね、ヘビースモーカーなんだよ」と紹介してくれました。

いつも遊んでいるのか、原田さんを見て喜んで駆け寄ってくる犬も。

 

 

原田さんと松尾さんが切り盛りする美容室天ですが、少し変わっているのが2人の仕事のスタイルです。

それは、2人で一緒にお客さんの髪をカットすること。

普段は1人で行いますが、初めてのお客さんやヘアスタイルを迷った時は、「お客さんと3人で相談しながら決めていく」ことも多いそう。

「1人より、2人で考える方が絶対良い案が出るに決まっている」と互いに意見を出し合い、同時にカットすることを当たり前のように話します。美容室ではあまり見かけない光景に驚きました。

 

 

仕事のパートナーである2人は、20年以上一緒に仕事をしているとあって、頭上で繰り広げられる軽快な掛け合いは、テンポの良い漫才を見ているかのようです。

互いに遠慮せず、原田さんの「こうしたら?」と言う提案に、松尾さんが「それはないよね」とずばりと切り返す場面も。

2人のやりとりに、つい笑ってしまいます。

 

小学生のお客さんが描いたお店から見える風景

 

SNSやホームページなどインターネットを使用した宣伝活動を「苦手だから」と全くしていなくても、絶えず人が訪れる美容室天。じんわりとしたまきストーブの暖かさ、眼下に広がる海、壁にかかるお客さんが描いた絵、全てが癒やしの要素ですが、何よりも2人の軽快な会話と緩やかな空気感が癒やされる所以ではないでしょうか。

 

 

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美容室天

〒819-1631 福岡県糸島市二丈福井783
090-2584-2658(予約制)

※カットのみ、女性のみ受付

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【取材日】2022年2月23日