わかまつ農園から広がる人々の幸せな未来を目指して
唐津湾が目の前に広がる二丈鹿家で、甘夏や梅、枇杷などの果実やオリーブを有機農法で栽培している「わかまつ農園」の若松潤哉さん。若松さんは、「農業をしよう」と、10年前に関東から糸島に移住してきました。きっかけは、東日本大震災の経験や、航空整備士として働いていたときに命と向き合う機会が訪れたこと。命に関わる出来事に直面したとき、生きる意味を真摯に考え、自然の営みを直に感じられる作物作り、つまり農業を志すようになったそうです。
写真提供:わかまつ農園
糸島に来て、はじめに苦労したことは理想の農地探しでした。有機農法に適した農地がなかなか見つからず、一年以上かかり出会えたのが現在の土地です。
まずは、10年以上耕作放棄地だったその土地を開墾するところから始まりました。竹が生い茂った道を自分たちの手で毎日数メートルずつ進み、畑に光と風の通り道を作ります。もともとあった甘夏の木々の手入れを丁寧に続けると、その気持ちに答えてくれるかのように、木々が生き返り、数年後には大きな甘夏がたくさん実るようになったのです。
写真提供:わかまつ農園
今では、農園で採れた作物を使い、「農香シリーズ」として精油や洗剤、保湿バームなどを製品化しています。使用感の心地よさなどから、さまざまな人たちに支持されている人気商品です。
「土から生まれたものが、役目を果たして、また土に還っていくというシンプルな循環が、この仕事の面白さですね。心を込めて作った商品が、使ってくれる人たちの暮らしの中で役立っているのはうれしい」と若松さんが理想とする農業の良さを語ってくれました。
写真提供:わかまつ農園
若松さん夫妻には、4人の子どもがいます。
子どもたちは、農園の作業を時々手伝ってくれるそうです。
「子どもに『将来の夢を見つけなさい』と、仕事で疲れ切った大人が言っても、夢は抱けない。いつも側にいる大人たちが生き生きと楽しそうに仕事をしていたら、子どもは自然と将来に希望を持って、夢を抱けるようになると思うんです」と、子どもたちが農園で妻の由加利さんにぴったりと寄り添う写真を見ながら話してくれました。
写真提供:わかまつ農園
「福吉は、農業や漁業を営む人が多いので、働く人の姿を身近に感じられるんです。また、仕事をしながら、子どもたちが遊んでいるのを見守ることができ、この環境で子育てができることをとても気に入っています」と言う由加利さん。
このお話しを聞いて、自然と暮らしが密着した土地で、子どもが土や生き物などに触れながら、生きる力を学び、そこから養われた感覚や感性は、 かけがえのない経験になるんだろうな、ということを考えさせられました。
若松さんは「農家と買い手がつながるコミュニケーションの場を作りたい」という思いから、昨年夏、福吉駅から徒歩約3分の場所に「お菓子と暮らしの物 りた」をオープンしました。
店内のカフェのおすすめメニューは、農園で育てた野菜をたっぷり味わえるピザ。生地には有機小麦の全粒粉を使っています。目を引くスイーツは、オリーブの葉のパウダーを生地に練り込んだ緑色が美しいロールケーキ、手作りの餡と最中の皮にもこだわった新商品の「糸モナカ」など自信作がそろっています。
写真提供:わかまつ農園(料理写真2点)
併設の直売所では、自家栽培の野菜や、農園で採れたはちみつ、農香シリーズの商品などを購入できます。
今ではこの場所は、地産地消の取り組みが生産者と消費者の出会いにつながったり、カフェを利用する客のくつろぎの場になったりと、地域活性化の役割を担う場として、福吉の新しい拠点となっています。
一言PR
お菓子と暮らしの物 りた
◎カフェ&スイーツ ◎オーガニック直売 ◎暮らしのもの
糸島市二丈吉井3745-8 TEL:092-326-6101
店休日:火曜 Instagram:nouka.wakamatsu_rita
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【取材日】2022.02.24