水耕ネギ生産:横尾俊一さん

細心にして大胆であれ。大きなハウスで丁寧にネギを育てる。

福ふくの里から南へ歩くこと3分、たくさんのビニールハウスが並ぶ「ハウス団地」。右も左もビニールハウスの中で迷っていると、ハウスから出てきて案内してくれたのは、福吉でネギを育てて22年の横尾俊一さんです。糸島で初めて水耕ネギを栽培しはじめた横尾さんは、現在も妻の江美子さん、息子の貞治さんとともに、約40アール、4棟のビニールハウスでネギを育てて出荷しています。

 

 

パートさんも総出で定植作業を行なっています。

 

元々はみかんの栽培をしていた横尾さんが、水耕ネギの栽培を始めたのは22年前。福ふくの里ができ、周辺のビニールハウスの整備が行われた時でした。「だから歴史は福ふくの里と一緒やね」と穏やかに話します。みかん栽培でも全国大会に出品するほどだった横尾さんですが、自然が相手ゆえの苦労も多く、より安定した作物を消費者に届けたいという思いで、思い切って水耕ネギにシフトしたのだそうです。

 

 

 

福ふくの里からほど近いビニールハウス

 

突然、静かだったビニールハウスに機械の音と水の流れる音がしました。何の音か気にしていると、「こうやって液が流れていって、その液がまた水槽に入って循環しよると」と、教えてくれました。1時間に1回、肥料の入った水がポンプで流れ、ハウス全体のネギに行き渡るようになっているそう。ハウスの秘密はそれだけではありません。ハウスには水を流すため傾斜があって、夏は冷やしたり、冬は温めたりと水温の調節もできます。また、ハウス内の温度が上がると自動で天窓が開き、気温の調節ができる仕組みも。骨組みも頑丈で風速70メートルの台風にも耐えられる、自慢のビニールハウスです。

 

 

この管から時間ごとに肥料の入った水が流れます。

 

 

水はこのタンクから循環しています。

 

そんなハウスの中では、毎朝早くからネギが収穫されています。ネギは種をまいて1カ月ほどで苗ができ、苗を定植してから出荷するまでの期間は、夏で1カ月、冬は2カ月ほど。まっすぐ育ったネギは、福ふくの里など糸島の直売所に並んだり、二丈地域の小学校給食にも使われたりするほか、はるばる静岡の大手スーパーにまで出荷されていきます。「給食でネギを食べた小学生から『ネギおいしかったよ』とか『ネギがんばって食べるね』とか手紙をもらうとよ」と優しい笑顔の横尾さん。

 

 

ネギの小さい赤ちゃん。ハウスで定植を待ちます。

 

 

収穫したネギを50グラムずつ束ねます。「手の感覚で50グラムが分かる」と妻の江美子さん。

 

 

はるばる静岡まで出荷される横尾さんのネギ

 

妻の江美子さんが、水耕ネギの一番のおすすめレシピ「ネギサラダ」を用意してくれました。「水耕ネギは土に触れてないから、土臭さがなくて、生でもおいしく食べられる」と話す江美子さん。材料の「ネギ、ツナ缶、コーン、カニカマ」に「マヨネーズ、塩こしょう」を加えて混ぜ合わせていきます。食べてみると、本当に土臭さがなく、マヨネーズのマイルドさも加わって、いくらでも食べられそう。ネギの辛みもあまり感じないので、子どもでも食べられる味です。

 

「こうして生で食べることもあるけん、安全性には気を付けとるよね」と話す横尾さん。虫が多い夏でも農薬は最小限にし、虫が少ない冬はさらに減らして栽培しているそうです。

 

 

ネギサラダの材料

 

 

材料を混ぜていきます

 

ネギの栽培で楽しいことを尋ねると「小学校の学習や地域の行事で、子どもや地域の人が農業の体験にきてくれること」と笑顔で教えてくれました。横尾さんは子どもと接することが好きで、昭和54年には福吉に柔道のスポーツ少年団をつくり、20年ほど前まで子どもたちに柔道を教えていたのだそうです。

 

 

地域のみんなが農業体験で植えた棚

 

行政区長としても活動していた横尾さん。福吉の好きなところは、「地域のつながりが強く、祭りや地域の活動にみんなが協力してくれるところ」と話します。その関係は、よくお酒を飲みながら語り合うほどの仲だとか。鳴き砂で有名な「姉子の浜」も、1度は鳴かなくなったものの、平成5年に復活して以来、貴重な地域の財産として、福吉地域で毎月1回清掃しているそうです。

 

横尾さんの座右の銘は「細心にして大胆であれ」。丁寧に育てられたネギを見つめながら、糸島で初めてネギの水耕栽培にチャレンジした話を聞いていると、その座右の銘がすんなりと入ってきました。

 

愛情たっぷりの水耕ネギは今日もハウスでぐんぐん育っています。ぜひサラダで試してみてくださいね。

 

 

 

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自慢の水耕ネギです。ぜひ生で、サラダで召し上がってみてください。

福吉のおすすめ

姉子の浜の鳴き砂

小さい頃から鳴き砂で遊んでいた浜。環境の変化で1度は鳴かなくなってしまいましたが、地域の協力もあり復活しています。

【取材日】2023年2月2日