日蓮宗 白龍山妙現寺:大塚 英胤さん

浮嶽の山神と龍神の逸話を残す妙現寺

二丈浜玉道路(かもめロード)を車で唐津方面に向かって走っていくと、福ふくの里を少し過ぎた辺りから左手にお堂の上に鎮座する大仏様の姿が見えます。近くで一目見ようと、ツーリング中のバイカーが度々訪れるという日蓮宗白龍山妙現寺(はくりゅうざんみょうげんじ)。寺の駐車場に車を止めて階段を上っていくと、全高12メートルの大仏様が少しずつ姿を現し訪れる人を静かに見つめます。

 

 

写真提供「妙現寺」

 

妙現寺は1882年に現在の地に建立された「日蓮堂」が始まりで、1945年に寺号を「妙現寺」と改め今に至ります。1955年に誰でも平等に納骨ができる大仏平等墓が建立され、妙現寺の大仏様もその時に作られました。当初はコンクリートの像でしたが、1994年に塗装が施され現在の姿になったそうです。

 

 

 

秋にはイチョウを背景にした大仏様の姿が美しい 写真提供「妙現寺」

 

 

 

大仏祖霊堂(納骨堂)の内部

 

2018年に、祖父、父と続く妙現寺の住職を受け継いだのは3代目となる大塚 英胤(えいいん)さん。生まれも育ちも福吉で、幼少期から寺の手伝いをしてきました。「将来なりたい職業を話す同級生たちがうらやましくて、最初は住職を選択することに抵抗がありました」と話す大塚さん。

 

住職としての覚悟が芽生えたのは、大塚さんを子どもの時からいつもそばで見守ってくれていた祖母を亡くした時。供養の気持ちもあり、その後すぐに日蓮宗の100日行という厳しい修行に出たと言います。修行は水を全身に浴びる水行を毎日欠かさず早朝から深夜にかけて1日7回行い、食事も最低限で半断食のような生活が続くので、終わる頃には体重が20キログラムも減っていたそうです。心身ともに鍛えられ、現在では雷山(川原)の法隆寺の代務住職も兼務しています。

 

 

 

3代目住職の大塚英胤さん

 

日蓮宗では日蓮聖人の命日の10月13日に桜を飾る習わしがありますが、妙現寺では祖父の英源さんの命日に合わせ、12月6日に桜の形に切った紙に願い事を書いて、餅花のように飾ります。

 

取材を行った12月19日、大塚さんが桜飾りで華やかな本堂でお経を聞かせてくれました。ゴーンと空気を震わせながら鳴る金丸(かなまる)の音と木鉦(もくしょう)の一定のリズム、腹の底に響くような力強い大塚さんの声が本堂に響き渡り、手を合わせて聞いていると内から勇気が湧いてくるようでした。

 

 

 

桜飾りが華やかな本堂

 

 

大塚さんが妙現寺に残る面白い逸話を二つ教えてくれました。

 

一つ目は、祖父の英源さんの夢に浮嶽山神の白山妙理大権現(はくさんみょうりだいごんげん)が出てきて、「浮嶽の頂上に浮嶽神社の鳥居の材木が埋まっているから、それで鬼子母尊神、七面大天女、最上位経王稲荷大菩薩の三体の像を作りなさい」とお告げがあった話です。

 

 

鬼子母尊神(子授けや安産、子育ての神様)

 

 

七面大天女(法華経を信仰する人々の守護神、龍神でもある)

 

 

最上位稲荷堂は、妙現寺から徒歩10分。昔、火の見やぐらがあったことから、この辺りは「ガンガン山」と呼ばれていたそう。忠義のため亡くなった人を祭る忠霊塔もあります。

 

 

最上位経王稲荷大菩薩。狐にまたがった最上様の右手の稲穂は実りを、左手の鎌は災いをなぎ払うという意味を持ちます。
※通常はお堂に鍵が掛かっているため、拝見の際は妙現寺にお問い合わせください。

 

二つ目は、祖父の英源さんが浮嶽の山中で100日行に挑んでいた際、浮嶽の龍が修行を見守り成功に導いたと言う話。それ以後、浮嶽の龍は妙現寺の守り神として言い伝えられています。「どういう訳か分かりませんが、自分が住職を継承する入寺式の時も雨で、その後も行事の度に決まって雨が降るんです。龍は水神。雨が降った時は、浮嶽の龍が祝福に来てくれていると思うようにしています」と困ったような、でもどこかうれしそうな顔をして話す大塚さん。

 

 

写真提供「妙現寺」

 

 

写真提供「妙現寺」節分祈願祭の水行の様子

 

毎年2月11日の節分祈願祭には、妙現寺に多くの人が集まります。大塚さんたちの迫力ある水行を間近で見ることができ、福引などもあるそうです。「檀家に関係なく、誰でも気軽にお寺を参ってくれたらうれしいです。お寺でコンサートなどをしてもいいし、公民館のような地域のコミュニティーの場になる寺でありたいです」と、これからの寺のあり方について大塚さんが語ってくれました。

 

「天高けれども孝よりは高からず 地厚けれども孝よりは厚からず」。

 

これは親孝行の教えを説いた大塚さんの好きな言葉です。「この教えのように、日々感謝の気持ちを持って供養の気持ちを届けられたらいい」と控えめに話す大塚さんが、妙現寺の大仏様のように見えました。

 

 

一言PR

どなたでも遠慮なくお参りください
春には桜、秋にはイチョウがきれいです
寺の鐘撞堂から眺める福吉の景色を楽しんでいってください

福吉のおすすめ

筑紫富士と名高い浮嶽。頂上に浮嶽神社と白龍稲荷神社があります。
白龍稲荷神社のお社は妙現寺が作ったものです。

【取材日】2022年12月19日