ステーキハウスアンガス 前園幸作さん

大入に巡り合い移転開業 眺めもおいしい「ステーキハウスアンガス」

令和元年(2019年)7月、大入駅より徒歩5分の海沿いに、アメリカ産の黒毛品種であるブラックアンガス牛をメインに提供する「ステーキハウスアンガス」は開店しました。マスターである前園幸作さんは、ステーキ一筋の熟練者。JR博多シティ内にある商業施設「博多デイトス」で37年間の営業を経て、昔からなじみのあった大入に移転開業しました。

店の前の看板には『今日はちょっとすて~きな気分』のうたい文句♪

 

『やわらか~い!』と思わず声が上がる赤身のフィレステーキ♪

 

都会の繁盛店を切り盛りしていた前園さんは、若かりし頃からのいくつかの思い出が繋がり、大入に行き着きました。粕屋郡で生まれ、高校時代は水泳部で活躍。大入出身の後輩の実家で合宿をしたのが、大入との最初の出会いでした。社会人となり多忙な日々を送る中、娘さんを連れ海水浴に訪れたのも、ここ大入。「車を持っていなかったからね、電車で行ける海水浴場と言えばここ。海の家があって、砂浜ももっと広くてね」と往時を懐かしみます。

何度となく遊びに行くにつれ、いつか眺めのいいこんな所に店を出したいと思うようになりました。そんなある日、海沿いの荒れ果てた土地に売地の看板を見つけた前園さん。丈の高い草に覆われ道路から海は隠れて見えませんでしたが、家族にも内緒で購入。博多での仕事を終えてから大入に通い、草刈り機で一人、額に汗しながら5年かけてやぶを切り開きました。

窓外にはおだやかな大入の海

 

当初は、糸島牛が有名なこの地に輸入牛のお店を出していいものかと不安もありました。しかし、長年提供し続けてきたアンガス牛を大入の海の景色と一緒に味わってもらうのもまた一つの楽しみになればとの思いです。折しも赤身ブームとなったこの頃、スーパーの店頭でもアンガス牛の名前を見ることが増え、店名に「アンガス」をつけた父親の先見の明に思いを新たにします。

「ステーキハウスアンガス」は前園さんの父、前園幸兵衛さんが創業しました。昭和30年代、幸兵衛さんは、終戦とともに駐留した米軍基地のあった大野城市で、基地から食材を仕入れ、ステーキやハンバーガー、フライドチキンを出すアメリカ人相手の洋食屋を始めました。昭和40年(1965年)には中州市場に「ステーキハウスアンガス」1号店を開店。博多駅朝日ビル、大丸と徐々に店舗を増やしていく中で、博多駅が山陽新幹線の終点駅となったタイミングで新設された博多デイトスへ進出しました。昭和57年(1982年)、幸兵衛さんと同じ料理人の道に進み神戸で修行をしていた幸作さんが、博多デイトス店の切り盛りを任されました。それから37年、バブル崩壊や病原菌O157、狂牛病の発生などの世間の荒波を乗り越えながら、サラリーマンから観光客まで慌ただしく入れ替わるお客さん相手に、安くておいしいステーキを提供してきました。

熟練の焼き加減

 

黒毛和牛と同様に穀物飼料で育ったアンガス牛は、程よくサシが入り、鉄板で焼き上げると柔らかで食べ応え十分です。おいしさの秘訣は、肉質に加え鉄板の厚さにもあります。一般的な家庭で使うフライパンの厚みが2~3ミリに対しお店では18ミリの鉄板を使っているので、肉を載せても鉄板の温度は下がりません。まず表面に焼き色を付けて肉汁が出ないよう壁を作り、お客さんの好みに応じた一歩手前の状態に焼き上げます。それを温めた鉄板プレートに載せテーブルへ運ぶと、絶妙な焼き具合で食べることができるという訳です。

ステーキの写真

 

大入でのオープンに際して、新たに挑戦したのはその名も「大入駅前バーガー」。ステーキ屋さんのハンバーグが挟まれたハンバーガー…かぶりつくには豪勢すぎてナイフとフォークが必要な一品です。テイクアウトして海辺に降りて食べるのもおすすめです。

海をバックにかわいいポップ

和牛ハンバーグの厚みでかなりのボリューム♪

 

「ここのお客さんは本当に優しいんですよ」と教えてくれたのは、博多デイトス時代から前園さんを支えるスタッフの伊藤さん。二人で切り盛りしているため、お会計をお待たせすることもありますが、「いいのよ。冷めないうちに運んであげて」「待っているから大丈夫」など、糸島だからなのか、窓外に広がる海がのどかだからなのか、大らかなお客さんに助けられています。また、釣った魚を頂いたり、町内会でついたつきたての餅の差し入れが届いたり、地元にできたお店として喜んでくれる近所の方々にも支えられる日々です。

息の合ったもてなしが居心地の良さを生み出す

一言PR

夏は海水浴がてら(シャワーあり!)、きれいな海の見えるステーキ屋へどうぞいらしてください

福吉のおすすめ

やっぱり魚かな。釣り人に船を出す仕事をしているご近所さんが取れたてのアジなんかを持ってきてくれて、やはり新鮮でおいしく、心が温まります。

【取材日】2022/3/3