3代目のスタンド経営。常連客が立ち寄る地域のたまり場的な空間
JR筑肥線大入駅の目の前に、セルフではないガソリンスタンドがあります。車が入ると、スタッフの女性が笑顔で迎えてくれる、どこか懐かしい雰囲気の「諸熊石油」。意外にも、経営しているのは30代の若手、諸熊太地さんでした。
「祖母が立ち上げたスタンドなんですよ。手伝い始めたのは14年前ですけど、気づいたら後継ぎにされていたって感じで。自分はここで生まれ育ったから、外に出るつもりもなかったし、福吉は居心地がいいから反論もなかったですけどね」。諸熊さんは3代目の経営者になった経緯を、面白おかしく話してくれました。
普段の仕事は、車関係のほか、地域の家庭がお風呂を沸かすために使っているボイラー用の灯油配達、重機や遊漁船の燃料としての軽油配達などがあるそうです。顧客のほとんどが代々つながる常連さんで、「お互いの家族関係まで知知り合っている関係」だとか。仕事とプライベートの境があまりなく、配達がてらお客さんの話し相手になることも日常茶飯事のようです。スタッフの女性も幼なじみというから、スタンドそのものが大きな家族のような印象でした。
そんな気心の知れた人たちに囲まれた環境に加え、もう一つ、福吉が居心地良い理由が「自然しかないっていうところ」と諸熊さん。JR脇の国道からは見えませんが、実は、スタンドのすぐ裏は、大入漁港に続く海岸線が広がっています。
「小学生のときは、男友だちだけでモリを持って海に出て、魚を突いていましたね。魚のさばき方も漁師の子どもに教えてもらって覚えたんです。山も近いからよく自転車を走らせて、カブトムシやクワガタムシを捕まえに行っていましたよ」
今でも、趣味は海釣り。店内の一角にはずらりと釣り道具や大物の釣果の魚拓が並んでいて、そこだけ見ると釣具店かのようですが、「釣り好きのお客さんがここに来て、釣りの話で延々と盛り上がることもありますよ。うちはそんな店なんです」と笑います。
コーヒーを飲みに来たり、スポーツ新聞を読みに来たり、タバコ吸いに来たり…。常連客たちが何でもない世間話をしにふらりと立ち寄る地域のたまり場のような空間。こうした“家族“のようなお客さんたちは、ガソリンの価格競争で他店に勝てないことがあっても、ずっと通い続けてくれているそうです。
「この地域も高齢化していますが、『あの人はどげんしとうね?』って気に掛け合う関係性は大事にしたいですね。地元で生まれ育って感じる福吉の良さが、こういう居心地の良さですので」
地元育ちの諸熊さんが経営するスタンドだからこその、地域に馴染んだアットホームな存在感がありました。
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元気で明るい女性スタッフが笑顔でお迎えします。お気軽にお立ち寄りください。
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福吉校区では、糸島市と地域が協働した自主運行バス「ふくよし号」(福吉校区自主運行バス協議会が運営)が週3日、地域の足として走っています。運転手をはじめ、スタッフはボランティア。運賃は無料。車を運転できない高齢者も多いので大活躍です。生活感たっぷりのバス、どうぞ温かく見守ってください。
【取材日】2022年2月16日