白山(はくさん)神社
河上 定嗣(さだつぐ)さん
福吉のおすすめ
二丈岳山頂の岩の裏には、白山神社の奥宮である菊理姫命を祀る小さな祠(ほこら)があります。登頂の際ご参拝ください。
取材日:2021年7月4日
御鎮座900年に向けて白山神社に人々が集う鎮守の杜を築きたい
白山神社で禰宜(ねぎ)を務める河上定嗣さんは、毎朝7時に朝拝を行い、朝を知らせる太鼓を叩きます。その後、境内の清掃をして神社での1日が始まります。
福ふくの里から南の山間に向かって約400m。案内の立て札に沿って進むと白山神社の鳥居が見えてきます。石段を登ると、青い銀杏の実がひとつふたつと落ちていて、境内には青もみじと夏越の大祓えの文字。茅の輪くぐり神事の準備をしている初夏の神社は見た目にも涼やかです。装束姿の河上さんが社務所に通してくれました。
白山神社では、年越しと5月の春季大祭に糸島市無形文化財の福井神楽の奉納があります。10月の秋季例大祭には、厄年の男衆が神輿を担ぎ大名行列を行う神幸祭があり、福吉を代表する行事として知られています。福吉の人々は古来より五穀豊穣や大漁満足など白山神社に祈願してきました。
「白山信仰は、私たちの生活に欠かせない命の水を育んでくれる霊峰と自然を尊ぶ信仰です。山から流れる栄養豊富な水が、麓の里の農作物を育て、さらに海へと流れ出て豊かな漁場を作ります。白山神社は二丈岳と浮嶽から流れ出る福吉の水をお守りする神社です」と河上さんが教えてくれました。
社務所の壁には歴史を感じる記念写真が飾られている
河上さんが白山神社に奉職するようになったのは8年前の40歳の頃。それまでは七宝焼のジュエリーデザイナーを20年近くしていたと言います。現在は父で宮司の定德さんと共に白山神社の神職を務めています。
河上さんに福吉の印象を尋ねると「福吉は山と海が近く自然の調和が取れた豊かな土地ですが、平地が少ないので昔は農作物を作るのにも工夫をしながら暮らしていたと思います。福吉の人は働き者が多い印象です。昔も今も福吉の雰囲気は変わっていないと感じます」と幼い頃から今に至るまでの福吉の様子を思い返しながら話してくれました。
硯で墨をすり、御朱印帳に筆書きする河上さん
河上さんが厄払いの祈祷をする場面に立ち会うことができました。拝殿の床板は幅の広い一枚板で、長年磨き上げられた天然木は自然な艶と品格があります。
河上さんが幣束(へいそく)を振ると場の空気が一変
太鼓の「ドドドドド…」という音と、河上さんの大祓詞(おおはらえのことば)が拝殿に響く
最後は「シャラン シャラン」と鈴の音でお清め
おはらいを受けた人は「祈祷の間、心が洗われていくようだった」と明るくすっきりした面持ちでした。
「今はコロナで祭祀(さいし)のみになっており、お宮での直会(なおらい)ができなくて寂しいです。いつも祭祀の後にはみんなで神酒を酌み合い、境内は『なおらい』じゃなくて『酔っぱらい』であふれていたのに」と笑う河上さん。
そんなコロナ禍でも「今できることを」と、河上さんは約20年後の御鎮座900年に向けて計画していることがあります。白山神社の裏手の土地に自生の木々を植樹して、白山神社に「鎮守の杜」を作ることです。ナギやスギの木など、この地に自生している木々を選び自然な杜を作ろうと今年から活動を始めています。
神社裏手にある約450坪の土地
神社の裏手にはナギの巨木と苗木があるのですが、河上さんがナギの葉を1枚取って見せてくれました。ナギの葉は葉脈が縦にあることで、横に引っ張ってもちぎれないことから縁結びの木と言われています。縁結びの神様、菊理姫命(ククリヒメノミコト)をお祀りする白山神社にふさわしい木ですね。
青くみずみずしいナギの葉
「神社は人が集う場所。昔から地域コミュニティの場としての役割を担ってきました。コロナが落ち着いたらまた、神賑い(かみにぎわい)ができたらいいですね。鎮守の杜にも人が集えるような空間を作っていきたいと思っているんです」と初夏の陽が差す緑の中で、爽やかな色の装束を着た河上さんがうれしそうに話す姿がとてもまぶしく映りました。数十年後の白山神社の鎮守の杜が人の笑い声であふれていますように。どんな杜になるのか今からとても楽しみです。
神社の裏手から鎮守の杜になる場所を望む
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白山さま(菊理姫命ククリヒメノミコト)は、縁結び以外にも、禊祓(みそぎはらひ)の神様として有名で「おはらいといえば白山さま」と言われています。「厄除け・方位除け」などのおはらいは白山神社へお越しください。
白山神社
〒819-1631 福岡県糸島市二丈福井4909
092-326-5916
https://hakusanjinjya.amebaownd.com